2025年6月2日公開
最終更新日:2025年6月3日
インサイドセールスの目標の設定方法とは? KPIの項目や目標達成のコツを解説
インサイドセールスを導入して受注率を高めるためには、適切な目標が必要です。目標に向かって施策を決めることで、ビジネス上の最終目標を達成しやすくなります。この記事では、インサイドセールスの目標設定について詳しく解説します。
インサイドセールスにおける目標設定の必要性
インサイドセールスを実行する際は、目標設定が欠かせません。次の3つの理由により、目標設定が必要になります。
客観的な評価や改善が可能になる
インサイドセールスの目標を決めると、客観的な評価および改善に役立ちます。たとえば、商談化数やメール開封率などの目標数値を設定すれば、データにもとづいた施策の評価が可能です。評価基準が個人の経験や価値観に依存しないため、改善すべき業務を見逃したり無意味な施策を重ねたりするリスクを抑制できます。また、目標の達成状況は、業務の進捗管理や人員・予算の割り振りの判断材料としても参考になります。
受注までのボトルネックを特定できる
インサイドセールスの目標があれば、業務の中で受注に至るまでの工程を妨げているボトルネックを特定できます。ボトルネックを見つけるためには、メール開封率、架電数、商談化数、有効商談率、受注率といった各工程の目標数値と実数を比較します。目標数値との差分が大きい工程を確認することで、受注に至らない原因の発見が可能です。例としてメール開封率が目標よりも低い場合、「リードに見合ったコンテンツの選定」「タイトルのわかりやすさ」といったメルマガ施策の改善が必要だとわかります。
社内教育の指標になる
適切な目標は、社内教育を行う際の指標として応用できます。インサイドセールスの目標は、受注までの工程に設定します。そのうえで各工程の個人の目標を設定すると、それぞれのメンバーの成果を数値として確認可能です。メンバーごとの得意または苦手な業務を把握できるため、伸ばすべきスキルや重点的に教育すべき部分を明らかにできます。また、目標の達成度合いが数値化されることで、各メンバーの成果を可視化できます。したがって、モチベーション向上にも目標設定が効果的です。
インサイドセールスにおける目標設定のフレームワーク
インサイドセールスの目標を決める際は、情報を整理するためにフレームワークを使いましょう。インサイドセールスの目標設定でよく使われるフレームワークは、以下の3種類です。
KGI(重要目標達成指標)
KGI(重要目標達成指標)とは、ビジネスにおける中長期的な最終目標です。「前年度比で売上15%アップ」「上半期のコスト5%削減」のように、年次や半期・四半期など中長期的な頻度で設定します。KGIは組織全体で共有され、インサイドセールスの方向性を決定する重要な目標です。そのため、KGIを決める際は、インサイドセールスの戦略との整合性が求められます。
▼インサイドセールスの戦略については、以下の記事で詳しく解説しています。
インサイドセールスの戦略の立て方を解説! 具体例や組織体制、戦略を決める際のポイントとは?
KPI(重要業績評価指標)
KPI(重要業績評価指標)とは、最終目標であるKGIを達成するための中間的な目標です。長期的な目標であるKGIに対して、KPIは月次や週次、個人別に細かく設定します。KGIが「前年度比売上〇〇%アップ」であれば、KGIを達成するための要素をKPIとします。「月間商談化数〇〇件」「月間着電数〇〇件」と、受注までの工程を分解してKPIを決めましょう。KGIの達成に向けて、クリアすべき目標を段階的に考えていきます。
SMART
SMARTとは、目標を設定する際の思考法です。次の5つの指標を満たすかを確認することで、効果的なKGIやKPIを設けられます。
・Specific:具体的な
・Measurable:測定可能な
・Achievable:達成可能な
・Relevant:経営目標に関連した
・Time-bound:期限がある
上記5つのポイントを抑えた具体的かつ現実的な目標があれば、より一層インサイドセールスを成功させやすくなるでしょう。
インサイドセールスのKPIの設定項目
インサイドセールスの目標のなかでも、KPIはとりわけ重要です。適切にKPIを設定して1つずつ目標を達成していくことで、KGIを実現できる可能性が高まります。インサイドセールスのKPIに設定する項目は、主に次の6つです。
商談化数・商談化率
商談化数とは、インサイドセールスが育成したリードから獲得した商談(アポイント)の件数です。商談化率とは、営業活動を行ったリードに対する商談化数の割合です。インサイドセールスの役割はリードナーチャリング(育成)であり、商談を創出するためにリードと良好な関係を構築します。したがって、インサイドセールスにとって商談化数 / 率は重要なKPIとなります。
有効商談数・有効商談率
有効商談数とは、受注の見込みが高い商談件数です。商談件数に対する割合を有効商談率と言います。多くの場合、インサイドセールスによる商談獲得後、実際に商談を進める部署や担当者はフィールドセールスです。そのため、フィールドセールスが有効商談であるかを判断します。どのような条件を有効商談とみなすのか、部署同士で連携して事前に定義を決めておくことが大切です。
架電数・通話時間
架電数とは、リードへ電話をかけた件数です。新規顧客の開拓をインサイドセールスが担当する場合や、既存リードへ新規製品を紹介するケースで設定されます。さらに、架電によってリードと通話した時間もKPIとして活用できます。架電数と通話時間をKPIに設定することで、インサイドセールス担当者の行動量の測定が可能です。また、電話によるサポートの効率化や品質改善を目的とする場合も有効です。
着電数・着電率
着電数とは、リードへ架電して担当者へつながった回数です。コネクト数や接触数とも言います。着電率は、架電した回数のうち着電した割合です。架電しても担当者へつながらなければ商談を獲得できません。架電数や通話時間と合わせて着電数 / 率も商談獲得への重要な過程であるため、KPIに設定できます。加えて、リードごとの着電率が高い時間帯や曜日を洗い出せば、着電率をさらに向上できるでしょう。
メール開封率
メール開封率とは、リードへの送信に成功したメールのうち読まれた件数の割合です。リードナーチャリングにメルマガ(メールマガジン)を利用している場合、重要なKPIとなります。メール開封率をKPIにして効果測定を行うと、コンテンツ、タイトル、送信時間・曜日などの条件から開封率が高まる要因を分析できます。ターゲット層が幅広い場合、読者に合わせてコンテンツを変える「セグメント配信」も開封率の向上に役立つでしょう。
受注数・受注率
受注数とは、名前の通り商談後に受注が確定した件数です。受注率は、商談を行ったリードのうち受注に至った件数の割合となります。商談からクロージングまではフィールドセールスが担当する形式が一般的です。受注に関してもフィールドセールスの役割ですが、受注率の高さは企業の利益を左右するため、インサイドセールスも意識する必要があります。受注確度の高さを意識したリードナーチャリングや商談獲得を行ううえで、インサイドセールスも受注数 / 率をKPIとして扱うことをおすすめします。
インサイドセールスの目標・KPIの設定方法
インサイドセールスの目標やKPIを設定する際は、以下3つの手順に沿って進めましょう。
1.KGIを決める
現時点で明確なKGIがない場合、はじめにKGIを決めます。KPIは、KGIを達成するためのプロセスです。KGIがなければ、適切なKPIを立てられません。売上高や利益率の向上、コスト削減など、定量的な数値で表せる目標をKGIとしましょう。
2.KGIの達成に必要な要素を洗い出す
次に、KGIを達成するために、どのような要素が必要なのかを洗い出します。売上アップをKGIとする場合、架電数、商談数、顧客単価、受注件数、有効リード数、チャネルごとのリード数といった要素が最終的な売上アップに関わります。
3.KPIを設定する
最後に、洗い出した要素をもとにKPIを設定します。インサイドセールスに限らず、KPIは複数作るケースが一般的です。また、曖昧なKPIではなく、明確な数値のKPI設定が重要です。たとえば、商談化数をKPIとするなら「月間商談化数30件」と必ず具体的な数字を決めましょう。
インサイドセールスの目標設定のポイント
インサイドセールスの目標を設定する際は、次の4つのポイントを意識すると適切なKGIやKPIを決められます。
SMARTを活用する
KGIとKPIは、どちらもSMARTを使って目標を決めましょう。SMARTを活用することで、具体的かつ測定可能な目標を設定できます。また、到底達成できない非現実的な目標にしてしまう事態も避けられます。万一、非現実的なKPIを設定した場合、メンバーの評価を不当に低くしてしまうかもしれません。モチベーション低下を招くため、かえってビジネスの不利益につながるでしょう。SMARTにもとづいて目標を考えることで、現実的に達成できる範囲の数値を設定できます。
関係者と定義を共有する
目標を設定する際は、インサイドセールスだけでなくマーケティングやフィールドセールスなどの関係部門ともKPIの定義を共有しましょう。KPIの定義がずれていると、マーケティングが獲得する有効リードや、フィールドセールスが行う有効商談の意味合いが変わってしまいます。KPIの達成状況を正確に把握できなくなるため、データにもとづいて施策を評価できません。施策の適否を判断できなければ、本来はするべき改善を放置してしまうリスクが高くなります。
KPIの妥当性を検証する
KPIが本質から外れていないか、きちんと検証しましょう。SMARTをもとにKPIを設定しても、主観を完全に排除できるわけではありません。管理者1人でKPIを考えず、メンバーに意見を聞いたり過去の実績と照らし合わせたりして、KPIの妥当性を見極めましょう。また、KPIに関して相談や意見を行いやすい環境づくりも大切です。KPIの達成状況を振り返り、適切な目標であるかを定期的に評価する体制も求められます。
チャネルごとにKPIを設ける
インサイドセールスのKPIは、リードと接触するチャネルごとに作りましょう。セミナーやメルマガなど、チャネルによってリードの検討段階が異なります。たとえば、Webサイトの問い合わせフォームや資料ダウンロードから獲得したリードの場合、すでに他社との比較または購買の検討といった段階にいるケースが多いでしょう。反対に、オンラインセミナーの参加者は、全員が自社のサービス・商品へ興味を持っているわけではありません。こうしたチャネルの違いに合わせて、KPIの数値を変えましょう。
インサイドセールスの目標を達成するためのコツ
インサイドセールス目標は、設定しただけでは意味がありません。目標を達成することで、売上増加やコストカットといった最終的なゴールを実現できます。インサイドセールスの目標を達成するためには、以下5つのコツを参考にしてみてください。
KPIの進捗管理と評価を行う
目標を設定した後は、KPIの進捗状況を測定して達成度合いを評価しましょう。KPIを適切に管理するためには、評価システムの構築が必要です。たとえば、以下のように段階的にKPIを評価する手法があります。
・計画通りの進行でKPI達成可能
・計画の進行と異なるが月末にはKPI達成可能
・このままの進行ではKPI未達
こうした評価システムによってリアルタイムに各工程が想定通りに進行しているかを確認することで、未達成になりそうなKPIの対策へ早期に取り組めます。
質と量のバランスを考える
インサイドセールスのKPIの数値をむやみに多くするのは逆効果であり、質と量のバランスを考慮しましょう。たとえば、やみくもに架電数を増やしても商談獲得は難しく、結果的に受注へつながりません。リードの選別やチャネル、検討段階に合わせたリード育成、リードごとの着電率の測定など、商談および受注へとつながるようにリードの質も重視することが大切です。数値の大きさにこだわりすぎず、最終的にKGIを達成するために必要な量と質を考えてKPIを設定しましょう。
ツールでKPIを管理する
必要に応じて、ツールを導入してKPIを管理しましょう。例として、「CRM(顧客関係管理)」であれば、顧客の基本情報や対応履歴などの顧客と関わるデータの一元管理が可能です。さらに、「SFA(営業支援システム)」の場合、顧客情報や案件管理、予実管理といった機能があります。KPIの関連データの収集と管理に特化した「KPI管理ツール」も存在します。いずれもKPIの数値の集計や進捗管理に役立つため、インサイドセールスの業務内容に合わせたツールの導入を検討してみてください。
モチベーション維持の工夫をする
設定したKPIを達成するためには、インサイドセールスを実行するメンバーのモチベーション維持が欠かせません。基本の対策として、実現可能なKPI設定が重要です。業務やスキルアップへ真剣に取り組めば達成できる目標をKPIとすることで、メンバーの成長を促しながらモチベーションを向上させられます。また、KPIが多すぎたり、KPI同士の関連性が薄すぎたりすると、どのKPIへ優先的に取り組むべきかがわからなくなります。KPIの優先順位をつけて、効率的に業務へ取り組めるように工夫しましょう。
KPIを改善する
一度決定したKPIをそのまま運用し続けるのではなく、改善を繰り返すことが重要です。時系列順にKPIの達成状況と推移、実行した施策、発生したトラブルなどの情報を一覧化して、KPIの項目ごとに効果を検証しましょう。たとえば、停滞しているKPIがある場合、担当者の取り組み方に問題があるケースのほか、KPIの設定にミスがあるパターンも考えられます。長期間にわたって停滞しているKPIを発見した際は、「最終目標のKGIとずれていないか」「これまでの実績から飛躍しすぎていないか」など、改めてKPIの妥当性を再確認して改善する必要があります。
インサイドセールスの目標を見直すタイミング
インサイドセールスの目標は改善が必須であるため、定期的な見直しが求められます。目標を見直すタイミングは、次の3つのパターンが挙げられます。
・市場やビジネスモデルが変化したとき
・事業が成長したとき
・KPIの未達が続くとき
市場やビジネスモデルなどの環境が変化した場合、既存のKPIが合わなくなる可能性が高いです。ビジネスの環境によってターゲット層や自社の製品、業務内容は異なるため、環境に合わせたKPIを検証しましょう。事業が成長したパターンであれば、既存のKPIでは的確な評価が困難になります。売上や顧客の増加など、成長した部分に見合うKPIの再検証が必要です。
他の2つの要因と異なり、KPIの未達が続く場合はKPIの設定自体が間違っているおそれがあります。ビジネス環境の変化や事業成長といった要因がないのであれば、適切なKPIであるかを入念に検証しましょう。
インサイドセールスの目標を達成できない際の改善方法
インサイドセールスの目標としてKPIを設定しても、達成できない場合もあるでしょう。再検証してもKPIに問題がない場合、現状の施策に要因がある可能性が高いです。目標を達成できない際は、次の4つの改善方法を試してみてください。
リード育成の施策を見直す
KPIよりも商談数や受注数が少ない場合、リードの購買意欲を育てきれていない状態と言えます。リードナーチャリングの改善や、メンバーのスキルアップが必要です。リードナーチャリングは、顧客の検討段階に合わせて施策を変えましょう。自社へ興味関心はあっても購買意欲が低いリードであれば、メルマガによる情報発信やセミナーの案内が効果的です。購買意欲があるにもかかわらず商談化や受注に至らないのであれば、メンバーのトークスキルが低い可能性があります。話題の分岐や索引可能な目次があるトークスクリプトの作成や、さまざまなパターンのロールプレイングの実施により、メンバーのスキル向上を目指しましょう。
▼インサイドセールスの具体的な施策は、次の記事をご覧ください。
インサイドセールスの施策とは? リードナーチャリングや商談数増加の具体的な手法、成功のポイントを紹介
リードと信頼関係を構築する
商談数が少ない理由として、リードとの信頼関係の薄さも一因となり得ます。リードにアプローチする際は、商談獲得へ前のめりになりすぎないように注意しましょう。展示会やセミナーの実施、Web上のコンテンツの充実、リードに合わせたメルマガのセグメント配信など、リードにとって役立つ情報の提供が重要です。電話やオンライン会議ツールによってリードと直接対話する際も、商談ばかり持ちかけるのではなく課題解決を心がけましょう。また、問い合わせや資料請求などの申し込みがあった際にすばやく対応することで、商談の取りこぼしを防げます。
ヒアリングを重ねる
商談を獲得しても有効商談が増えない場合、ヒアリングが足りていないケースが多いです。すべてのリードに同じ内容を繰り返すのではなく、リードごとにヒアリング項目を最適化する必要があります。リードの業界や事業内容、会社の規模、現在の課題および課題解決に適した自社製品など、ある程度仮説を立ててから商談を行うとスムーズに進行できます。加えて、リードについて深く理解している姿勢を示すことで、信頼感を得やすくなるでしょう。リードに合わせて臨機応変にヒアリングをカスタマイズできれば、効率的に有効商談を増やせます。
成功要因を分析する
インサイドセールスのKPIを達成するためには、成功要因の分析も大切です。商談獲得数を増やしたい場合、商談獲得へとつながった通話の録音を分析して、トークスクリプトへ反映させましょう。メール開封率を上げたいのであれば、開封率が高かったメールのタイトルや本文を分析します。また、受注率が高い業界や企業の特徴を見つけ出して、製品ごとに狙うべきターゲット像の解像度を上げることも重要です。さまざまな成功要因を施策へ応用して、各KPIの達成状況を改善しましょう。
インサイドセールスは適切な目標設定が重要
インサイドセールスの目標を決める際は、KGIを決めてからKPIを設定しましょう。ビジネス上の最終目標であるKGIを明確にしてからKPIを決めると、インサイドセールスの戦略からずれた目標を設定するリスクを回避できます。具体的なKPIは、インサイドセールスの業務内容を分解して、メール開封率や商談獲得数、有効商談数などの項目から決めましょう。メンバーのモチベーションを向上させる適切な目標を設定することで、売上や利益率の向上といった最終目標を達成しやすくなります。
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